導入事例

トップツアー株式会社

G Suite + 1000 名の営業担当者全員に Android 端末を導入。“歩く店舗” という究極の効率化を目指す。

旅行営業本部営業企画部部長 脇坂 克也さん

経常利益率 1 % 程度の生産性をいかに高めるか

旅行業大手のトップツアー株式会社(旧・東急観光)は、2010 年 4 月から G Suite の全社一斉運用を始めた(従業員数約 1800 名)。その背景には、従業員の大半を占める営業部門の業務効率化への強いニーズがあった。

「旅行業界全体にいえることですが、経常利益率が 1 % あればいい方といわれる生産性をいかに高めるかが積年の課題です。そこで、当社も私の所属する営業部門を中心に、部門横断的なプロジェクトを作り、その対応策に取り組んでいます」と旅行営業本部営業企画部部長の脇坂 克也さんは言う。

同社のビジネスは、他社のようにネットを使って格安ツアーを大量販売するといったことではなく、企業や官公庁、学校など法人を相手に団体旅行を提案・獲得するところに強みを発揮している。したがって、営業担当者の渉外業務が同社の事業活動の柱となっている。

「即ち、生産性向上は一つの案件の提案・獲得から旅行後の入金までのプロセスをいかに短縮化するかということにかかっているわけです」

一方、同社では古くなったグループウェアの更新時期を迎え、2009 年 8 月からその検討を始めた。その検討ポイントに、営業活動の生産性向上があったのはもちろんである。

「当時のグループウェアは社外からのアクセスを完全に制限していたので、営業現場からはモバイル端末でアクセスできるようにしてほしいという要請が上がってきていました」と経営管理本部 IT 戦略部部長の安原 弘文さんは言う。これまで、営業担当者はイントラネットにある情報の検索・出力や報告書の作成といった作業が必要となるたびに帰社しなければならず、非効率の温床となっていた。しかしながら、システムとしては社外からのアクセスも不可能ではなかった半面、セキュリティ面から開放するわけにはいかなかったのである。

「国内外に拠点が約 100 カ所あり、それらにおける社外からのアクセス運用ルールを本部ですべて管理するのは事実上不可能。したがって、アクセスそのものをシャットアウトするしか手がなかったのです」と安原さんは述懐する。それ以外にも、動作が重く(遅く)なって情報の検索に時間がかかるなどの問題も生じていた。

約 1 億円の増益効果が出せると試算

月額のランニングコストが 1 人あたり 500 円という安さ、そして様々な機能が使え、しかも Google サイドで常にバージョンアップをしてくれるという将来への発展可能性、機能拡張性などを評価しました。

脇坂さんと安原さんは生産性向上プロジェクトで連係し、既存のグループウェアのバージョンアップおよび代替システムの導入を比較検討。代替システムとしてまず挙がったのは、脇坂さんがメールマガジンで興味を持ったある CRM のシステムであった。しかし、検討を進めると、営業担当者が最も活用するメールやカレンダーはほかのシステムで補完する必要があること、CRM の部分は既存の自社のシステムが使えることが判明。一方、その CRM システムを通じて“クラウド”の魅力を再確認し、検討プロセスで知った G Suite に注目した。

「実際は一気に 1800 アカウントで始めましたが、30 アカウント程度と小さくスタートさせることもできること、月額のランニングコストが 1 人あたり 500 円という安さ、そして様々な機能が使え、しかも Google サイドで常にバージョンアップをしてくれるという将来への発展可能性、機能拡張性などを評価しました」と脇坂さん。安原さんも次のように続ける。

「既存グループウェアのバージョンアップでは、肝心の社外からのアクセスにセキュリティや操作効率を伴わせることが難しく、根本的に変えるということにはなりません。 G Suite ならば、脇坂の言うメリットに加え、社外からのアクセスも容易になります。セキュリティ面においても、その堅牢さにおいて全世界でサービスを提供し続けていることに安定感や信頼感を持ちました」

そして、同時に G Suite に親和性の高い Android 端末の全営業担当者約 1000 名への導入もセットで検討。これによる生産性向上で少なくとも約1億円の増益効果が出せると試算できた。また、G Suite の総導入費用は、グループウェアのバ

Google ドキュメント で手間を大幅に削減

通勤時間を利用してメールチェックできる、報告書などを書くためにいちいち会社に戻らなくても済むようになった、メールを検索で探せるのが便利、といった時間節約効果が出始めていますね。

要件定義および移行のための開発作業に 3 カ月ほどをかけた。その間、既存のグループウェアで使っていた約 70 種類のデータベースを30ほどに集約し、 Google サイト に移し替える作業を行った。

「移行作業は内容を熟知している社内の人間が行ったほうがよいという判断で、人事発令も伴わせながら半ば強権発動して 3 週間かけて行ってもらいました。この作業が今回の導入プロセスで一番きつかったと思います」と脇坂さんは述懐する。しかし、G Suite および Android 端末を導入後、まもなく効果が表れ始めた。

「通勤時間を利用してメールチェックできる、報告書などを書くためにいちいち会社に戻らなくても済むようになった、メールを検索で探せるのが便利、といった時間節約効果が出始めていますね。また、メールボックスの容量がそれまで 1 GB であったところが 25 GB に増えたので、『もうメールを削除しなくていいですよ』と伝えたら、社内にどよめきが起きました」と脇坂さんは笑う。それだけでなく、 Google ドキュメント のスプレッドシートを活用して帳票類の作成業務を効率化させている。

「それまでかかっていた、帳票をメール添付で送り、回収して集計するという手間が大幅に削減できました。社内に一種のカルチャーショックが走りましたね(笑)」と安原さんは目を細める。また、掲示板機能を活用して社員による情報投稿を促進している。

「例えば、いいレストランを見つけたら、お客さまとの接待やお客さまに情報提供できるので、みんなで共有しようというものです。この情報には Google マップ を連動させていく予定です」(脇坂さん)

その場で空室状況を確認、その場でクロージング

地方の営業担当者は車を使って営業していますが、営業車自体がオフィス化できる可能性があります。社内の営業スキルやノウハウなどを全員で簡単に共有する仕組みを構築し、時代の変化に対応した “仕事のしかた” を確立する。

G Suite および Android 端末はまだ使われ始めたばかりで、脇坂さんらは今後のさらなる活用を目論んでいる。

「現段階では既存システムとの連携で売掛金の状況や企画商品の空席状況などの確認をできるようにしましたが、今後は営業概況報告や各種申請を出先から Android 端末で作成・送信させることを検討しています」と営業企画部マネージャーの住本 卓巳さんは言う。そして、Android 端末の活用による営業効率の向上を、脇坂さんは次のように目論んでいる。

「これまでは、お客さまからホテル予約のご依頼を受けると、営業所に戻って予約状況を確認し、お客さまに報告し受注するという流れでしたが、急いでいるお客さまなどにはその間に他社にアプローチされてしまうという機会損失もあったわけです。それが、Android 端末があれば、その場で空室状況を確認し、その場でクロージングをすることができる。この差は非常に大きいと思っています。」

「 G Suite と Android 端末による IT 武装の先には、全国の営業拠点のネットワーク再編や、SOHO 化、提携販売店への当社営業プラットホームの貸与など、さまざまなことが考えられます。さらに、個々の営業担当者を “歩く店舗” にすることもできる。地方の営業担当者は車を使って営業していますが、営業車自体がオフィス化できる可能性があります。社内の営業スキルやノウハウなどを全員で簡単に共有する仕組みを構築し、時代の変化に対応した “仕事のしかた” を確立する、つまり BPR(業務プロセスの再構築)とそれによるコスト削減により、一層の生産性向上を目指します」と脇坂さんは続ける。

Android 端末を 1000 名を超える営業担当者に一斉導入するのは、日本初のケース。こうした先端性で、トップツアーは営業生産性の向上という課題を真っ先にクリアしていくに違いない。同社の将来が楽しみだ。

※ G Suite (旧 Google Apps for Work )