導入事例

株式会社マイナビ

サーバー増強、また増強…。負のスパイラルから G Suite で脱却。

IT 担当はいつ止まるかわからないシステムに苦悩

苦労してサーバーを増強しシステムを改善しても、わずか 2 年で限界に達する。このような負のスパイラルから抜け出すためにはサーバーの自営を止め、クラウドに移行するしかない

2012 年初頭、株式会社マイナビ(以下マイナビ)の IT 担当は「このままでは、いずれメールシステムがパンクする」と苦悩していた。

マイナビはインターネットの黎明期から、IT を活用した様々なサービスを展開していた。当時は、インターネットを利用するのであれば、自社でサーバーを用意し、システムを構築し、それらを自分たちで運営していく方法が普通だった。当然、必要に応じてサーバーを増強しシステムを改善していたが、それが徐々に限界に近づいていた。

とくにメールサービスについては、業務拡大によるアカウントの増加、添付データの急増などの対応に負われるようになり、2010 年にはとうとうサーバーの処理が追いつかなくなってきたのだ。状況を改善するために、業務システム統括部は従業員に対して「受信したメールはサーバーから削除する」ことを繰り返し伝えた。さらにメールの使用状況やサーバー負荷状況について、「深夜や土日でも確認していました。そこまでしなくても良かったのかもしれませんが、万が一を思うと気になってしかたがなかった」と振り返る。このようなストレスに悩まされながらも、2010 年の危機はサーバーの増強とシステムの改良で乗り切った。

だが休む間もなく危機が訪れる。対策を講じて、2 年も経たない 2012 年初頭、メール送受信の遅延が発生し始めたのだ。朝の出社後の時間帯や、営業職が戻ってきてメールのやりとりが活発化する夕方には、目に見えるレベルの遅延が現れていた。業務システム統括部による対処で、システムはギリギリ持ちこたえてはいたが、いつ止まってもおかしくない状況でもあった。

IT 担当は決断を下す。「苦労してサーバーを増強しシステムを改善しても、わずか 2 年で限界に達する。このような負のスパイラルから抜け出すためにはサーバーの自営を止め、クラウドに移行するしかない」。

自営サーバーからクラウドへ… Google を選択

クラウドであれば、臨機応変に資源を増やすことが可能だ。「例えば、数百人の新卒が入社する場合、従来はサーバーのディスクやメモリを追加しなければならない。マシンそのものをリプレースする必要も出てくるかもしれない。しかし、クラウドであれば人数分のアカウントを追加すればいい」と IT 担当。また、万が一、故障や障害が発生しても、データはクラウドにあるため BCP の面から見ても有効である。

さて、どこのサービスを利用するか。IT 担当は早速、サービスの提供会社の選定に入った。だがマイナビのメールシステムが、やや特殊だったため、要件を満たすサービスはなかなか見つからなかった。1 つはコストの問題。マイナビの当時の従業員数は 1,700 人だが、実はグループメールのアカウントは約 3,000 あった。このアカウント 1 つごとに課金されてしまうと、大変な金額となってしまう。これを解決する朗報が、グループメールのアカウントと課金について相談していた Google の代理店からもたらされた。代理店から提示されたものは、 Google グループ。メンバー全員が情報を共有する、掲示板とメールを組み合わせたものだ。G Suite のサービスに含まれるためコストもかからない。また同時に、もう 1 つの問題であった、メール配送上のセキュリティルールへの対応も可能なことがわかった。Google であれば問題はない。早速、IT 担当は G Suite の導入を決め、2012 年 8 月、稟議を提出。スピーディに導入が決定された。

導入時は、旧システムを利用しながら段階を踏んで移行する予定であった。だが新たな問題も見つかり、それをクリアする作業にムダを感じた IT 担当は、「いっそ思い切って、一気に移行してしまおう」と決断。2012 年の 12 月には一部が、2013 年 2 月には、全てが G Suite に移行されることになった。

導入してみてわかった G Suite のメリット

セキュリティを無視することはできません。その一方で、モバイルなどの利便性も活かす必要があります。G Suite は、そのバランスが取りやすい

今後どれだけアカウントが増えても、サーバーを購入したり、細かな設定変更をする必要がなくなった。稼働率も重要だ。Google ほどの企業であっても完璧ではない。ごくまれにではあるが、障害が発生することもある。だが復旧は迅速で、長時間のシステムダウンはほぼ無い。これだけでも、業務システム統括部のメンバーの心はかなり楽になった。

システムとしては大きな変更だったが、既存のメーラーを使えるように設定したため、実際に使う側としては、特に大きな変更もなく、これまで通りの操作で作業ができた。また、スマートフォンやタブレットで利用する場合は、マイナビでは Gmail のブラウザ画面を利用することになった。「Gmail のユーザーインターフェイスは優れたものです。特にモバイルについては非常に使いやすい」と IT 担当は言う。馴染みのあるインターフェイスだったこともあり、ほとんどの者が違和感なく使用することができた。

メールの容量と検索機能、デバイスフリーのメリットも実感できた。これまではサーバーに負荷をかけないために、メールデータはサーバーからは削除するようになっていた。この場合、過去のメールは、ダウンロードしたクライアントでしか検索できなかった。現在、一人あたりのメールボックスは 30 GB あり、この容量であれば、普通に使用している人なら数年間は保てる。外出先からでも、スマートフォンやタブレットで過去のメールを検索したりできるので、利便性の上でもかなりのメリットがある。ただし、マイナビでは、社外からのアクセスに対しフィルタリングや認証ルールを厳密に設定しており、相応の制限がなされている。IT 担当は「セキュリティを無視することはできません。その一方で、モバイルなどの利便性も活かす必要があります。G Suite は、そのバランスが取りやすい」と語る。

より利用しやすくするために…業務システム統括部の挑戦

G Suite で、導入以前と同じアカウントが使えることは、使う側にとって魅力だったようだ。またメーラーについては、「メールをすべてブラウザにしてしまうという考えもあった。また、そうすることによって利便性が上がる部分も、確かにあった。ですが、使い方を変更してしまうと、短期的には生産性が落ちてしまいますし、人が介在する以上は使い慣れたルールがあります」と、IT 担当は使う側への配慮を重視した。移行後も、スムーズにメールが利用できるように、業務システム統括部は常に気を配り続けた。そして、移行から約 8 ヶ月、様々な調整を重ねた結果、メールシステムの運用方法はほぼ完成したという。

以前のように、メールが止まるというプレッシャーや、サーバーの拡張などに頭を悩ます日々からは解放された。だが、だからと言って業務システム統括部の仕事が無くなった訳ではない。「もっと使いやすく便利なものに進化させること、それが今の目標です」と IT 担当は語り、例えば「Google ドキュメントが活用できれば、情報の共有という面において、更に利便性が増す。また、スマートフォンやタブレットを、もっと活用できる仕組みについても検討中」という。「今はやることが多くて、すごく困っています」と語る IT 担当の表情は意外にも、いや当然ながら明るい。