導入事例

全日本空輸株式会社

世界的なエアライン企業グループが G Suite を活用「ワークスタイルイノベーション」を推進

全日本空輸株式会社 業務プロセス改革室イノベーション推進部部長 荒牧 秀知さん 業務プロセス改革室イノベーション推進部業務イノベーションチーム主席部員 林 剛史さん

創立 60 周年で『強く生まれ変わる』を背景に

ANA グループは、2013年3月に G Suite を 4 万 9000 アカウント導入した。国内最大の導入数となる。対象は、グループ約 40 社の従業員約 3 万 3000 人で、それ以外の約 1 万 6000 アカウントは、出向者が出向先の別アカウントを立てたり、業務用のアカウントとして利用する。

導入のそもそものきっかけは、2006 年から利用していたメールシステムのサービスサポートが 2013 年 5 月に終了すること。このため、ANA では、2011 年 6 月に次期メールシステムを検討するプロジェクトを立ち上げた。その検討プロセスのさなか、2012 年 12 月の創立 60 周年が視野に入ってきた。「経営トップから、人間でいえば還暦であるが、ここは赤子に還って仕事のやり方を見直そう、というメッセージが『強く生まれ変わる』とのスローガンとともに届いたのです。そこで、本プロジェクトは単なるメールシステムのリプレイスではなく、『ワークスタイルイノベーション』を実現しうる情報基盤を導入するミッションを担うことになりました」と業務プロセス改革室イノベーション推進部長の荒牧 秀知さんは言う。

当時の同グループの OA インフラとしては、メールシステムに加えてグループウェアやデータストレージを導入していた。しかし、メールボックスの容量は 1 人 50 MB で、海外出張や夏季休暇などで1週間程度不在にしていると、満杯となって古いメールから消失してしまっていた。そういった事態を避けるためにも、多くの社員はメールをローカル端末にダウンロード保存していた。 「現代ではメールに依存する仕事がかなり増えています。つまり、端末のある自分のデスクから離れられないワークスタイルになっていた、ということです」(荒牧さん)

「自前主義から利用主義へ」舵を切る

「自前主義から利用主義へ」、つまりオンプレミスからクラウドサービスの活用へと舵を切る決断をした。

一方、世の中はスマートフォンやタブレット端末が登場するなど、コンシューマー IT がハイスピードで進化している。従来は、ワープロや PC などがビジネス現場から家庭、個人に広まるという流れであったものが、今や逆転の勢いだ。インターネットが進展しクラウドサービスが登場し、場所や時間を選ばない「ノマドワーク」という新しい働き方も広がり始めている。

「会社が PC などのハードやソフトを導入すれば、償却し終わるまで使い続けることになります。その間に IT の進化は進み、5 年経ったら世の中から置き去りにされている、という事態になるわけです。しかも、ユーザー数 3 万人以上という規模のものを更新するには時間もコストもかかる。そうではなく、つねに最新の状態に身軽にアップグレードできる IT インフラを導入できないものか、検討することにしました」

そこで、ANA では「自前主義から利用主義へ」、つまりオンプレミスからクラウドサービスの活用へと舵を切る決断をした。

「 SaaS 型の製品がたくさん登場してくる中、企業が利用する上で必須のセキュリティが担保できるメドも立ってきました。そこで、そうしたサービスの中から最適なものを選択することにしたのです」

OS の影響を受けない G Suite に決定

ANA の OA 環境では、Chrome ベースで稼働する G Suite がワークスタイルイノベーションに最も寄与する製品であると判断しました。全体的に身軽な点がよかったですね

実質的な製品選定は 2012 年 6 月から始め、11 月に決定。最終的に荒牧さんらが検討したのは、G Suite ともう 1 製品。G Suite に決定した理由を、荒牧さんは次のように説明する。

「 ANA の OA 環境では、Chrome ベースで稼働する G Suite がワークスタイルイノベーションに最も寄与する製品であると判断しました。全体的に身軽な点がよかったですね」

11 月に決定後すぐに導入のための開発を開始し、翌 2013 年 3 月末にリリースを迎えた。

ANA では、「ワークスタイルイノベーション」のための情報基盤の整備を、 1. G Suite の導入、
2. 仮想デスクトップ( VDI )の導入、
3. 社内電話のスマートフォンへの置き換え
の 3 段階で進める方針を立てた。
2 は、「ワークスタイルイノベーション」の一環として検討されているフリーアドレス制と導入済みの在宅勤務制度を合わせ、働く場所を選ばない環境づくりのため、シンクライアント端末から仮想サーバー上のデスクトップにアクセスできる VDI を導入するというものである。これにより、離席時間の多い部署などのオフィススペースの無駄を排除できる。

3 は、現在の固定電話+一部社員に支給している PHS では社外での利用に制約があり、またスマートフォンであれば G Suite も社外で使えることにより業務効率がアップする。なお、BYOD も選択肢に含め、セキュリティが担保できる状況であれば社員の希望により利用を認める方向で検討している。

2週間を要する作業が数日に生産性が劇的に向上

社内のアンケート調査も、従来は一連のシステム設定に 2 週間程度を要していたところ、Google ドキュメントを使えば最短で2日もあればできるようになりました。しかも、システム部のフォローなしにユーザーサイドだけでできてしまいます。

G Suite の活用も段階的に進めていく。まずは Gmail、Google ドライブ、Google ドキュメント、Google トーク (現 Google+ ハングアウト)をリリースしすでに利用を始めている。導入に当たっては、マニュアルおよび活用事例をまとめた「ベストプラクティス集」などを用意。さらに、問い合わせデスクを設け、その Q&A を逐次掲示板の FAQ に追加していくなどのフォローアップを講じている。

「データを集約し分析する業務の時など、従来はエクセルを添付したメールを送り合い、誰かがマージした最新のエクセルを送って誰かが修正し、それをまた送って、といった手間暇のかかる作業をしていました。それが、Google のアプリケーションを使うことで全員が同時に一つのスプレッドシートを共有し、チャットしながら同時に作業できるようになったのですから、こうした作業の生産性は劇的に向上しましたね」と同部業務イノベーションチーム主席部員の林 剛史さんは評価する。

「社内のアンケート調査も、従来は一連のシステム設定に 2 週間程度を要していたところ、Google ドキュメントを使えば最短で2日もあればできるようになりました。しかも、システム部のフォローなしにユーザーサイドだけでできてしまいます」と荒牧さんは補足する。

次に、現在既存のグループウェアで行っているスケジュール管理や会議室予約、備品管理の Google カレンダーへの移行も視野に入れている。「個人的に Gmail と Google カレンダーを連動して使用しているユーザーから『便利だから是非業務でも使いたい』との要請もあるので、徐々に切り替えていきたい」と林さんは説明する。

Google+ も導入しハイレベルなワークスタイル環境に

以前は研修が終わればまた現場に分かれてかかわる機会がないまま ... Google+ があれば、研修後も同じ立場の社員同士がコミュニティをつくり、以降継続的に悩みやノウハウなどを共有する場を持つこともできます。

さらに、Google+ も導入し、社内コミュニティ活動やハングアウトによるバーチャル会議も促進する予定だ。

「例えば、新任管理職研修などの場でせっかく知り合えても、以前は研修が終わればまた現場に分かれてかかわる機会がないまま、というケースが大半でした。Google+ があれば、研修後も同じ立場の社員同士がコミュニティをつくり、以降継続的に悩みやノウハウなどを共有する場を持つこともできます」と荒牧さんはその活用イメージを披露する。

ロンドンや北京などの拠点スタッフとのミーティングも気軽にできるようになる。従来は、資料を事前に送付し、日程を調整して、とこれも手間暇がかかっていたが、Google トーク (現 Google+ ハングアウト)で在席を確認してミーティングを招集すれば、ハングアウトと Google ドキュメントを組み合わせて在席のまま資料を見ながらのミーティングができてしまう。「これによる時間とコストの削減効果も大きい」と荒牧さん。なお、広くオープンに人と人がつながるという思想で設計された Google+ のコンセプトをベースに、アクセス制約など企業で利用する上での情報管理上の措置をどう盛り込むかについて、Google のテクニカルスタッフも交えて検討、クリアした後にリリースの運びとなる予定だ。

G Suite や Google+ に加え、VDI やスマートフォンの導入で、ANA グループ社員のワークスタイル環境は極めてハイレベルな次元に移行する。

「 2016 年度の営業利益 1500 億円など、当グループが掲げている中期経営戦略の達成に向けて、まずは業務生産性を著しく高める情報基盤をつくることができると考えています」と荒牧さんは期待を述べた。